経営についてのアドバイスや提案がほしい
経営者の皆様方からは会計事務所の役割として「経営についてのアドバイスや提案がほしい」という声を良く耳にいたします。先生によっては税理士の方で税務のプロなのだから税務の関与だけで充分だという方もおります。当社の場合はこの業界に入った目的が「経営について何かのお役立が出来たならば」といった気持ちでこの業界に入って来ましたものですから、最初から経営についての勉強をしてまいりました。私が勉強しだした当時は経営についてのコンサルティングが華やかな時代で、アメリカの経営コンサルタントの手法を皆様が学んでいた時代です。ヨーカドーの創業者の伊藤雅俊さんやダイエーの中内功さんがスーパー経営をアメリカに学んで大きくしていた時代です。ある時日本経済新聞社の主催で小売業のあり方について、2人の経営者が順次話された時に大変興味深い事が起こりました。前者の経営者は店舗の統合化を話され、後者の経営者が専門店化の話しをされた事があります。当時はどちらが正しいのか判断に迷いましたが、時がたつにつれ、おのずとどちらが正しかったかが分かってきました。これほど経営についてのカジトリはむずかしく困難なものと思います。一歩まちがえれば会社の業績は逆転します。
当社が今日顧問先について実施している事は以下の事です。
- 損益計画書についての要点の検討
- 加工高に占める人件費の割合の検討
- 過去10 年間の売上高推移を確認
- 資金の動きを過去1期間を振返って確認
- 生産性・支払い能力など、自社の状況について検討
- 次期の経営計画書の作成
- 利益対策または欠損対策について検討
- 消費税の原則か簡易かの有利不利について
(1)P/L(損益計算書)について要点を検討
1期間の会社運営の結果その期の業績としてB/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)が判明いたします。まず初めにP/Lについて要点を検討いたします。
この場合当社は過去5期間のデータをもとに検討いたします。(最初の頃は手書きでしたので5期間書き替えるのが大変でした)ここでの要点は売上高から変動費(材料費、外注費、消耗工具費の合計額、商業の方の仕入にあたります)を差引いた加工高の対売上比率が何よりも経営にとって大切なものはありません。従って当社ではこの加工高比率について、どのくらい顧問先の社長さんが把握しているかを決2(決算2回目の事)(ちなみに決1(決算1回目)で決算書は出来上っております)でお聞きします。従ってここでの社長さんとの話し合いは長くなります。この加工高比率を把握していないと5期間の様子が分らなくなるからです。当然ここでは顧問先の事業分類を検討し、社長さんに納得してもらいます。社長さん自身ご自分でどんな事業をなさっているのかを分ってもらうためです。少なくとも今迄の私供の経験では3つぐらいの事業をやっている事が分ります。これはどんな小さな企業も同じです。何度も社長に聞き直す内に次第に分ってくるものです。この事によって5期間の加工高比率の違いが分ってくると社長は当時の事を思い起して、良かった時悪かった時の事を話されます。
(2)加工高に占める人件費の割合を検討
次に加工高に占める人件費の割合です。
人件費とは、役員報酬、社員の給料、社会保険料の会社負担分その他社員のために会社で負担した費用の合計額です。私供の経験から黒字企業の方の割合は62%~63%になっております。経営者にとって実はここの比率が「カンジンカナメ」の比率となる事が経営が悪化した場合に実感として出てきます。上記62%~63%はあくまでも黒字企業の平均値であることを認識してください。この比率が経営者の判断のしどころです。中小企業の業績は良くて1年次に悪い時期が3年続くと言われています。従って経営者はたえず自企業の周辺に居る好調な企業をチェックしております。ここで言う周辺事業とは自社の持つ設備と技術力を言います。周辺事業でしたら自社の経験でなんとか事業に手が出せるからです。その時には思い切って自社社員をその事業に廻せるからです。従って最初はナカナカ思うようには行きません。その時には当然目安の人件費比率は高くなってゆきます。ここは社長のシンボウする所です。うまくゆくか、つまづくかの境目となります。また、自社の資金力に余裕があるのでしたら将来を見越して、人件費割合が62%~63%を越えても良いのですが、実際は皆ギリギリの状態で経営に取組んでいるのが実感です。だが「良くて1年次に来るのが悪くて3年」の事を考えると思い切った対策が必要になってきます。その時には資金が必要になる事もあります。当社は人件費60%を目安に必達売上高として損益分岐点売上高を表示した次期の計画書をお客様に提示しております。
(3)過去10年間の売上高推移を確認する
次に必要になるのが過去10年間の売上高推移を見る事です。グラフ化で見安くする事により、お客様が直近1年間を中心に過去10年間の状況についてお客様の話されたコメントが載っておりますので当時の状況を振返って気持ちを新たにしております。
(4)資金の動きを過去1期間を振返って確認する
次には企業にとって一番大切な資金の動きを過去1期間を振返って確認する事です。現預金がどのように運用され、どこから調達されたかを確認する事です。過去1年間の状況が黒字になっている時には余裕ある状況でいられるのですが、赤字の時には大変です。会社の自己資金比率が悪化すると同時に債務比率が上昇するからです。特にその期に借入分を都合して運転資金に廻わしている事では気分もメイリます。また多額の借入金を設備投資に資金を投資したからといって、利益が出ずに自己資本比率が悪化している状況では元気が出なくなってきます。自己資本比率については後のページで検討します。
(5)生産性・支払能力など、自社の状況について検討
現在、自社の状況がどのようになっているのかを確認すると比標をグラフ化して検討しております。ここでは政府機関なり民間のデータを基準とした比較となりますが、当社で長年にわたって見て来ておりますので比較割合がどのようになるのが、良いのかが判断がつきます。そこではまず生産性といった自社の人と他社の人との月の売上高、利益額、また自社と他社との損益分岐点売上割合、労働分配率といった事を比較し検討いたします。次に自社の支払能力について検討いたします。
特に短期での支払能力がどうなっているかを知る比率である、流動比率、当座比率について検討いたします。特に当座比率は当面の資金支払能力を見る上で大切な比標です。おおよそ80%が平均的な比標なのですが資金に困ってくるとこの比率が60%、50%に下がってきますと社長は会社に居られなくなってくる状態です。
また、月商借入倍率も資金調達を検討する上で大切な比標となっております。これは主に商業、製造、建設といった企業関係者の月商と借入金との比較です。この比標は黒字企業で商業で月商2ヶ月~3ヶ月、製造建設業で3ヶ月~4ヶ月が平均値です。従って、その割合が高くなると危険水位に入ります。また自己資本比率も大変重要な比率となっており、これは企業の今までの業績が反影している比率になっているからです。企業経営において毎期毎期業績は一定ではありません。黒字の時もあれば赤字の時もあります。しかし会社経営においてはたえずその時その時における会社の資金状況がどうなっているかが大切です。この比率は日本の企業が高景気だったといわれた昭和60年代の始めの比率より中小企業の黒字企業の割合は良くなってきております。現在は会社の持つ総資産の割合の4分の1、比率でいえば25%の数値になっております。あとは自社の加工高比率と他社の加工高比率を検討し、自社の加工高比率がどのような構成になっているかを検討することです。
(6)次期の経営計画書の作成
次に次期の経営計画書の作成です。
まず最初に次期の設備投資の有無についてお聞きいたします。次期の投資については、あらかじめお客様はどのようなものをいつ頃、いくらぐらいの金額で購入するかを予定しているものです。ですから当社はその事の確認をする事になるものです。その時点で金額と購入する時期、購入するものの内容が分りますので、すぐさまその期中の減価償却費を計算し、次期費用を計算します。次に役員の報酬についてお聞きします。その増減は開始事業年度3ヶ月目から次期の費用となります。次いで、社員の増減について人数と金額と時期について打合わせをします。その費用の増減は次期の費用の増減となってきます。次いで、過去5期間のP/Lをチェックするとその企業が大きく支出している項目が目につきます。その会社、独自の支出項目として力を入れている項目ですので、そこを確認しておきます。
最後に、当期加工高比率が次期の加工高比率として変更がないかを確認します。変更がない場合は、当期の加工高比率を使用し、当期の固定費に上記について確認した費用金額を加算、減算して次期の売上高を確定いたします。
私の考える企業運営の基本は人件費にあると見ております。企業は永続しなければなりません。しかし、企業のおかれた環境はたえず変化を続けます。その企業がその環境についていけなくなった時、経営状況は悪化し資金繰りが大変な事になります。資金繰りにキユウした時、最初に来る給与の減額は、社長の報酬の減額となって表われます。企業経営の悪化が続く事により社長の報酬は最低限のものになります。それでもだめでしたら社員の人数と金額の事となるのですが、ナカナカうまく行きません。
上記の事を考えて、私は「必達売上高」として加工高比率に人件費比率60%を掛けた比率で次期固定費合計を割って、次期の売上高として表示させていただいております。なかには、毎期毎期、必達売上高を超えている企業の社長は目標利益額をのせた売上高の表示を望む社長がおりますので、その時には生産性を考慮し、前期1人当り経常利益額を参考に今一つの次期経営計画書をつけております。
(7)利益対策または欠損対策について検討
次に利益対策または欠損対策について検討いたします。当社はお客様の事業年度開始後、6ヶ月がすぎた段階で7月目に巡回監査を実施し、翌8ヶ月目にお客様の損益状況について打合わせます。お客様の事業年度はあと3ヶ月~4ヶ月で事業年度が終了します。この時点でお客様に残された3ヶ月~4ヶ月の売上高を初めとした費用状況を確認し、その年度が損益状況を予測し、利益対策又は欠損対策を打ちます。期中での対策となりますのでその対策案は有効に機能します。そこから法人税、県税、市民税、事業税、消費税の金額をお知らせしております。
(8)消費税の原則か簡易かの有利不利について
消費税の原則か簡易かの有利不利については、その事業年度開始前月の25日の朝に決定しております。従って税務署へ提出する書類はその日の朝に添付されております。