会計事務所と法人の確定申告ー1

 

 どの会計事務所でも法人のお客様と顧問契約をかわした場合には申告期限内に

法人の確定申告書を作成することになります。B/S(貸借対照表)には資産、負債

及びその会社の純資産が表示されP/L(損益計算書)には売上、材料仕入、外注費、

人件費、経費、利益等その会社の損益状況が表示されることになります。

 

 たしかに法人企業にとって、税務署に提出する申告書を自社でまとめることは年に

一度の仕事となる上に、あの難しく、しかも毎年またヒンパンに変わる税法を理解した

上での仕事となりますのでどうしても、税法の専門家である会計事務所に依頼する

ことになります。ですから、会計事務所がお客様の申告書をまとめて自社の申告書

に押印する時にはホッとした気持ちになるかもしれません。 そのための対価として

会計事務所に通常は毎月の顧問料と決算料を支払うことになります。

 

 会社にとって、創業の頃は当然の対価と思い支払っているのですが、時がたつにつ

れて会計事務所に支払う対価に見合うサービスを自社は受けているのか、又は顧問

料が高すぎやしないかとお客様は考えるようになってきます。会計事務所にとっては

難解な税法を理解した上でようやく申告書をまとめお客様に提供しているのですが、

お客様の要望は年々変わってきます。

 具体的には会計事務所だったら会社の資料を見て税務申告書の作成だけでなく、

具体的な会社の状況について説明してくれないと困るといった要望になってきます。

会計事務所の中にもそのお客様の要望に答えるべく会計ソフト会社の資料等を持

ちよって説明することになるのですが、今一度突っ込んだ説明には中々なりません

のでお客様も一、二度聞いているうちにあきてきます。何故か?そこには一期間終

了時点での決算終了時と、税務申告書をまとめ、会計ソフトで作成した会社状況説

明時の「時間のズレ」が発生しているからです。

 

 小売業、卸売業の商売の方の説明ですとわかりやすいのですが、小売、卸売を商

売にしてきた人達は何よりも大切にしてきた事は「粗利」といった売上総利益の「率」

です。

 ディスカウンターやコンビニ等が、日本に出現する前の小売業でしたら平均23%~

25%でしたし、卸売業でしたら平均12%~13%で商いをしていたものです。中小の製

造業も同じように、売上高から「材料費+外注費+消耗工具費(製造で使用される消

耗品費)」といった変動費を差引いた「加工高比率」が、小売、卸売業の売上総利益

率にあたります。この売上総利益率(小売、卸売業の粗利率、製造業の加工高比率)

をお客様が1年間、自社の経営に取り組んできた結果、どのような利率になっている

かを、お客様の事業分類ごとに検証する作業が大切になってきます。

 

 小売、卸売業の方は昔から粗利率を大切に経営に取組んできておりますので頭の

中にたえず粗利率を考えた商売をなさっていますが、製造業の方は中々そこまでは

いっていない方を多く見うけます。ですから、ここで大切な事は会計事務所が製造業

のお客様に決算をまとめた決算資料をお持ちして、まず初めに当期の加工高比率

(売上総利益率)を社長にお聞きすることになります。過去1年間の事業分類がどの

ような分類になっているかを聞き出すのですから初めは中々出てきません。幾度か

聞き返すうちに出てくるものです。

この事業分類はどのような小さな会社にあっても最低3分類くらいに分かれているも

のです。そこから各分類の材料費、外注費、消耗工具費等の対売上比率を聞いて

ゆくことになります。 最初は時間のかかる作業ですが、なれるに従い年々早くなって

きます。あとは各事業分類ごとの構成割合を聞いた上で「社長の考えていた加工高

比率」が出てきます。そこから実際に毎月の巡回でまとめた当期の経営資料の「加

工高比率」との突合せをするのです。ここで大切な事は社長から聞きだした「加工高

比率」と毎月の巡回でまとめた「加工高比率」の違いが大切になってきます。

 

 何故か?毎月の巡回での資料は実際の数値をまとめておりますので、社長から聞き

出した数値が事業分類の割合を勘違いしているのか又は事業分類ごとの材料費、外

注費、消耗工具費の割合が間違っていたのかといった検証作業が大切になってきま

す。この検証作業を繰り返すうちに社長の方で次第に過去の事を思いだして修正作

業がすすみ当期の経営資料でまとめた「加工高比率」を納得してもらうことになります。

ここで大切な事は社長が自社の加工高比率がどのような事業分類から成り立ち、その

事業ごとの変動比率がどうなっているかを知ることです。

 

 まさしく経営改善のポイントがここにあります。当社ではこの「加工高比率」を当期

を含めて5期間表示しておりますので、毎年打ち合わせをしているうちに、売上高の

状況と同時に加工高比率の変動の状況が確認されます。以上が「加工高比率」の

確認作業ですが、次に続く人件費等の検討は次回に書きたいと思います。

 

 余談ですが「会計事務所の個人の確定申告書」の作業は当社では「10月」から開始

しております。会計事務所の欠点である個人確定申告書作成時の残業をなくすため

に実行しております。

 

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